取材監修/筑波大学大学院人間総合科学学術院 教授 久野 譜也 先生
最近、こんなことに思い当たりませんか?
こうした症状は、筋力の低下が原因かもしれません。筋肉を増やす「筋トレ」=筋肉ムキムキの人というイメージを浮かべる人もいるかもしれませんが、筋肉を増やすことは、見た目を変えるだけでなく、年齢・性別を問わず、多くの人に健康効果をもたらすことがわかってきています。
●筋力アップの効果① 生活習慣病の予防
筋肉は血糖をエネルギー源として使うため、筋肉が増えることで血糖値がコントロールされやすくなり、糖尿病の予防や改善に役立ちます。また、筋肉が増えるほど、全身の代謝が高まり、脂質異常症や高血圧などの予防にもなります。
●筋力アップの効果② 冷え性の対策
筋肉はからだの発熱器官でもあるので、筋肉増強は冷え性の改善にもつながります。筋肉をつけることで、関節への負担が減り、腰痛への効果も期待できます。また、ふくらはぎの筋肉を増やすことは、脚の静脈がコブのように膨らむ「下肢静脈瘤」の予防・改善にも役立ちます。
●筋力アップの効果③ ロコモ予防
ここ数年、話題の「ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)」を防ぐためにも、筋肉増強が大切です。ロコモとは、骨・関節・筋肉などの機能が低下し、立つ・歩くといった移動能力が衰えて、将来の要介護や寝たきりのリスクが高まる状態です。元気に年を重ねるためにも、筋肉増強が大切です。
●筋力アップの効果④ 認知症・うつ病予防
筋トレにより、脳を活性化する物質(BDNF:脳由来神経栄養因子)の分泌が促されることもわかっています。それにより、認知症やうつ病を防ぐ効果も期待できるという研究結果※があります。
※厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』より

「筋トレ」というとジムでマシンを使って行うトレーニングを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、一般的には自分のからだの重み(体重)を利用して行う「自重トレーニング」で十分な効果があります。特別な道具は必要ないので、自宅で好きなときにトレーニングを行うことができます。とくに太もも(大腿四頭筋)、下半身(大腰筋、腹筋)など、大きな筋肉を増やす効果的なトレーニングを紹介します。動作は「ゆっくり、息を止めずに、鍛える筋肉を意識して」行うのがポイントです。
しこ踏みスクワット
大腰筋と太ももの筋肉を強化する
ここがポイント!

もも上げ腹筋
椅子に座って大腰筋と腹筋を強化する
ここがポイント!

筋力アップのためには、筋肉の材料になる栄養素やトレーニング後の回復に必要な栄養素をしっかりとることが大切です。筋肉を増やす食事のポイントとして、とくに重要なのが以下の3つです。
●筋肉の材料になるたんぱく質をしっかりとる
たんぱく質は筋肉の材料になる重要な栄養素。たんぱく質を豊富に含む食品は、魚介類、肉類、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品などがあります。とくに筋肉づくりには、肉や魚といった動物性たんぱく質がおすすめです。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の違いは、以下の記事で詳しく説明しています。
サプリやコスメでよく見かける「アミノ酸」は、たんぱく質をつくる大切な成分。体内でつくれない9種類の「必須アミノ酸」は食事からとる必要があり、9種をバランスよく含む食品ほど、たんぱく質として効率よく活用されます。
●骨だけでなく筋肉づくりにも大切なビタミンD
筋肉をつくるには各種のビタミン・ミネラルもバランスよくとることが大切ですが、なかでも重要なのがビタミンD。ビタミンDは、骨に必要なカルシウムの吸収や沈着を促すビタミンとして知られていますが、筋肉づくりにも重要です。さんま、さば、さけなどの魚類は、たんぱく質とビタミンDが同時にとれるので、筋肉づくりにはとくによい食品といえるでしょう。

●糖質はカットしないで適量をとる
砂糖やごはん・パン・めん類などの糖質のとりすぎは肥満のもとになります。ただし、完全に糖質をカットすることはおすすめしません。糖質は、筋トレのあとに筋肉が回復するときのエネルギー源として使われるからです。効率よく筋肉を増やすためには、1食あたり、ごはん(白米)お茶碗1杯程度の糖質が必要なのです。
最後におさらい
生活習慣病、ロコモ、認知症……筋力アップには、これらすべてを予防する効果があります。「未来の健康」は、今日の小さな積み重ね。まずは自宅でできる筋トレを「週に2回、1日5分」から始めてみませんか?