取材監修/睡眠専門医、日本睡眠学会評議員、総合診療専門医、医療法人RESM新東京・新横浜理事長 白濱龍太郎 先生
あなたは毎日、ぐっすり眠れていますか? 「なかなか寝つけなくて、寝過ごしてしまった」「朝すっきり目覚めることができない」――4月は、新しい環境で始まることの多い時期。環境の変化や気候の不安定さで、春は生活リズムが乱れやすく、睡眠の質が低下しやすい時期だとご存じですか?
日本人の30〜50代の4割以上は睡眠時間が6時間以下で、慢性的な睡眠不足という調査結果があります(令和6(2024)年国民健康・栄養調査)。慢性的な睡眠不足は、仕事のパフォーマンス低下や将来的な健康リスクにつながっている可能性も。睡眠専門医の白濱龍太郎先生は「睡眠は『時間』だけでなく『質』が大切。でも、多くの人が間違った睡眠習慣をつづけています」と指摘します。
まずは、あなたの睡眠状態をチェックしてみましょう。

睡眠不足や睡眠の質の低下が招く悪影響とは
睡眠不足や、たとえ時間は確保していても睡眠の質の低下がつづくと…
といった悪影響が出てきます。
ポイント1:睡眠時間の確保
最近は睡眠の質が注目されていますが、もちろん大前提として睡眠時間の確保が大切です。厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人の適切な睡眠時間の目安は6〜8時間とされています。忙しい毎日でも、少なくとも6時間は睡眠をとりましょう。
平日の睡眠不足から、休日は長く寝る人もいるでしょう。しかし、平日と休日の睡眠時間の差が大きくなると、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)という症状を招きやすくなります。これは、海外旅行の時差ボケのように、日中の眠け、疲労感、頭痛などをおこすものです。
平日と休日の睡眠時間の差は2時間以内にし、休日に長く寝てしまうときは平日の睡眠を見直しましょう。
ポイント2:「深睡眠」をしっかりとる
最近、睡眠の質の指標として重視されているのが、朝起きて「からだが休まった」と感じる度合い=睡眠休養感です。質の高い睡眠には、眠りはじめの3〜4時間に現れる「深睡眠」をしっかりとることが重要です。「朝すっきり起きられる」「日中の眠けが少ない」なども睡眠休養感を見る目安になります。
睡眠時間が足りていても、質が悪いと疲れは取れにくくなります。睡眠休養感がない・足りないと感じる人は、睡眠の質を高める食事や生活習慣をとり入れてみましょう。
寝つきをよくし、かつ睡眠の質を高めるには、朝の過ごしかたと食事がポイントになります。以下のようなことを心がけましょう。
●朝、起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
人の生体リズムは24時間周期よりやや長く、放っておくと体内時計がうしろにずれて、夜眠りにくくなります。それをリセットするスイッチになるのが「日光」です。朝起きたら、カーテンを開けて日光を取り込むと生体リズムが整って、夜に寝つきやすくなります。
●起床後1時間以内の朝食で体内時計をリセット
体内時計をリセットするスイッチは、もう1つあります。それは「朝食」です。起きてから、目安として1時間以内に朝食をとることで、体内時計がリセットされてさらに生体リズムが整いやすくなります。
●朝食でたんぱく質をとる
朝食の内容も大切です。睡眠ホルモンの原料になるセロトニンは、アミノ酸(たんぱく質の構成成分)の一種であるトリプトファンからつくられます。ですから、朝食でトリプトファンを含むたんぱく質をとることで、生体リズムがより整いやすくなります。
トリプトファンは、まぐろやかつおなど赤身の魚や魚の缶詰、大豆・大豆製品、卵、肉類、乳製品、ナッツなどに多く含まれています。朝食でこれらを意識的にとって快眠に役立てましょう。

朝食以外にも、できるだけ下記のような食事ルールを心がけると、睡眠の質のアップに役立ちます。
●できるだけ3食を決まった時間にとる
とくに朝食は決まった時間にとりましょう。
●夕食は目安として寝る3時間前までに
寝る直前にとると、血糖値が上がって自律神経が興奮するとともに、消化管が働きつづけるので眠りが妨げられます。夕食が遅くなる日は消化のよい軽めのものを選びましょう。
●こんな飲食物には注意
高脂肪の食事は消化に時間がかかって睡眠を妨げやすいもの。また、アルコール飲料は、飲んだあと寝つきがよくなるように感じても、睡眠の質を悪くし、途中覚醒を招きやすいことが知られています。寝る前にカフェインを含む飲料(コーヒー、紅茶、緑茶など)を飲むことも入眠を妨げる原因になります。

無理なくつづけられる食事と生活習慣が、睡眠の質を底上げします。ここにあげた方法をできることからとり入れ、4月の新生活は「快眠生活」からスタートしましょう。
まずは「朝食で意識的にたんぱく質をとる」ことから始めてみましょう。