取材監修/自治医科大学循環器内科学部門教授/同附属病院循環器センター・センター長 苅尾七臣 先生
「あれ?ちょっと血圧が高めなのかな」――健康診断の結果で血圧の項目にマークがついていたり、判定ランクが要観察などになっていたりして、ドキッとしたことはありませんか。
「そんなときは、まずその数値の意味を知っておくこと。そのうえで、必要な対策を行っていきましょう」と、自治医科大学循環器内科学部門教授の苅尾七臣先生は話します。
健診の血圧値の意味と、食生活で手軽にできる血圧対策について、苅尾先生に教えていただきました。
血圧は、心臓から送り出された血液によって血管の内側(血管壁)にかかる圧力のことで、健康診断の主要な項目のひとつです。血圧が高くなると、血管に負担がかかって、動脈硬化をはじめ、脳卒中や心筋梗塞などの病気につながるため、健診などでチェックすることが大切です。
高血圧の診断基準では、診察室血圧(医療機関や検査機関で測る血圧)で140/90mmHg以上を高血圧としています。なお、この数値は、「心臓が収縮したときの収縮期血圧(最高血圧)/心臓が拡張したときの拡張期血圧(最低血圧)」を並べたもので、いずれか一方だけでも当てはまると高血圧と診断されます。
一方、健康診断で「血圧が高め」の判定になる基準値は、健診機関などによって多少の違いがありますが、基本的には、この高血圧の診断基準よりも低めの数値でもチェックされるようになっています。
血圧の基本的な意味や診断基準などについては、以下の記事で詳しく説明しています。
血圧の仕組みや動脈硬化との関係、家庭血圧の正しい測り方・基準値をわかりやすく解説。減塩やカリウム摂取など、今日から実践できる高血圧予防の生活習慣を紹介しています。
血圧は、さまざまな要因に影響されますが、日常の食生活との関連でいえば、もっとも重要なのが「食塩のとり方」です。食塩(ナトリウム)を過剰にとると、からだは血液中の塩分濃度を薄めようと水分をため込みます。すると、体内を循環する血液量が増え、血圧が高くなるのです。ホースにたくさんの水を通すとパンパンに張るのと同じです。
健診などで血圧が高めという結果が出たら、まずは食塩とりすぎのサインかもしれないと疑ってみることが大切です。
食塩のとりすぎは血圧を上げるだけでなく、直接的にも血管壁を傷つける要因になります。その意味でも、食塩を適量にすること(適塩)が血管の健康維持につながります。
血圧が高くても自覚症状はほとんど出ませんが、血管への負担はつづき、動脈硬化を進める要因になります。動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳卒中など重大な病気のリスクも高まります。
日々のちょっとした心がけで適塩を目指しましょう。

食塩を極端に減らしすぎると、食事が味気なくなり長続きしません。日本人の食事摂取基準(2025年)では、1日の食塩摂取量の目安を成人男性で7.5g、女性で6.5g未満としています。また、日本高血圧学会では、1日の食塩摂取量6g(塩なら小さじ1杯、しょうゆなら大さじ2杯)以下にすることを推奨しています。減塩するほどよいという考え方ではなく、この基準に収まる「適塩」を目指しましょう。食生活で以下のようなさまざまな工夫をすることで、適塩を実践できます。

1ポイント1:塩味の代わりに魚の「うま味」などを使う
かつお節や煮干しなどで濃いめのだしをとり、魚のうま味を活用しましょう。こんぶだしもおすすめです。だしのほかに各種のスパイスや香味野菜なども活用すると、食塩を控えめにしてもおいしく食べられます。
2ポイント2:野菜などに多い「カリウム」をとって食塩をからだの外に出す
カリウムには、体内のナトリウムの排出を促す働きがあります。野菜や果物、海藻類などに多く含まれているので、積極的に食生活にとり入れて適塩に役立てましょう。1日の摂取量の目標値は、男性3,000mg、女性2,600mgです(腎臓病でカリウムが制限されている人は医師に相談してください)。

3ポイント3:血管を守る良質な脂質「DHA・EPA」をとる
青魚などに豊富なDHA・EPAは、血管を拡張する作用や柔軟にする作用、血液サラサラ作用などを通じて、血管と血圧の健康に役立つことが知られています。缶詰やフィッシュソーセージを使って手軽に食生活にとり入れるのもよいでしょう。

なお、高血圧予防には食生活のほかにも、適度な運動や十分な睡眠、ストレス管理などが大切です。
高血圧というと大人の問題ととらえがちですが、適塩は幼少期から心がけることが大切です。子どものころからなじんだ食習慣は長くつづきやすいため、適塩の食生活に慣れておくことが将来的な高血圧予防につながります。また、最近は食塩の過剰摂取、肥満、運動不足などが影響しておこる子どもの高血圧も問題になっています。現在と将来の高血圧を防ぐため,子どもも含めて適塩生活を心がけましょう。
適塩をはじめとする血圧管理術は、気負わず長くつづけることが大切です。「自分と家族に合う方法を見つけて、食事をおいしくとりながら食塩コントロールをしていきましょう」(苅尾先生)
