取材監修/日本栄養大学栄養学部教授 中西明美 先生
「子どもが魚を食べない」「毎日の献立を考えるだけで疲れる」「朝ごはんをちゃんと食べさせたいけれど、準備が大変」――こんなふうに、お子さんの食事や栄養に悩んでいませんか?からだに必要な栄養素は多数ありますが、なかでも成長期に大切なのが「たんぱく質」です。
子どもの食育や学校給食の専門家である日本栄養大学栄養学部教授の中西明美先生は、「たんぱく質は、筋肉、内臓、血液など、からだのほとんどの部分の材料になります。年齢を問わず重要な栄養素ですが、とくに成長期の子どもは不足しないように気をつける必要があります」と話します。
まずはたんぱく質不足について、気になるQ&Aからご紹介します。
たんぱく質が不足すると?
筋力が低下し、体力不足に
たんぱく質は筋肉の重要な成分なので、不足状態がつづくと筋力が低下して体力不足に。とくに成長期の子どもは成長障害をおこすので要注意。抜け毛や肌荒れ、免疫力低下なども招きやすくなります。

たんぱく質は体内でどうなるの?
分解されて人のからだ用につくり変えられる
たんぱく質を食べると、体内で分解されてアミノ酸になります。アミノ酸から人体に利用されるたんぱく質につくりなおされ、筋肉や内臓、皮膚などの材料になるのです。アミノ酸は20種類あり、そのうち9種類は体内で合成できない「必須アミノ酸」なので、食べものからとる必要があります。

肉を食べていればたんぱく質の補給はOK?
たんぱく質は種類とバランスがポイント
肉はたんぱく質が多い食品の1つですが、肉さえ食べていればいいというわけではありません。肉だけでなく魚や卵、豆、乳製品など、いろいろな食品をバランスよくとることで、体内で効率よくたんぱく質を合成・利用することができます。

たんぱく質は大きく以下の3つの働きがあり、からだに欠かせない大切な栄養素です。
①からだの材料になる
筋肉・骨・内臓・皮膚・血液など、からだのあらゆる組織の材料になる。からだの組織は常につくりかえられているため、毎日補給することが大切。
②からだの機能をととのえる
酵素やホルモンのおもな材料で、成長・消化・代謝を助ける。
③臨時のエネルギー供給源になる
炭水化物(糖質)・脂質が不足したとき、エネルギー源として使われる。
とくに、3〜15歳の成長期にたんぱく質が不足すると、筋肉や骨の発育を妨げるだけでなく、貧血や免疫力低下などのリスクも高まります。体力不足から疲れやすくなり、集中力が低下したり、抜け毛や肌荒れが増えたりすることも。進級・進学や新生活が始まる春だからこそ、食生活を見直し、「たんぱく質」をしっかりとって成長期の丈夫なからだづくりにつなげましょう。
たんぱく質は、必要な量を毎食とることが大切です。成長期の子どもが1日にとりたいたんぱく質の量は、下の表のようになっています。また、どのような食材にたんぱく質が含まれているか、一例を紹介します。


また、たんぱく質は、量だけでなく「質」も重要です。魚・肉・卵・大豆製品・乳製品など、食材を組み合わせてとることが大切です。動物性たんぱく質(魚・肉・卵など)と植物性たんぱく質(納豆・豆腐など)は1対1を目安にとりましょう。
以下の記事で詳しく説明しています。
サプリやコスメでよく見かける「アミノ酸」は、たんぱく質をつくる大切な成分。体内でつくれない9種類の「必須アミノ酸」は食事からとる必要があり、9種をバランスよく含む食品ほど、たんぱく質として効率よく活用されます。
上手にたんぱく質をとるには、以下のような点も大切です。

●毎食たんぱく質をとる
たんぱく質はからだに貯蔵しておけないので、毎食とりましょう。たとえば12歳の男子なら1日60gが推奨量なので、毎食20gずつとるようにします。
●ビタミンB6と一緒にとる
食事からとったたんぱく質を体内で使える形につくりかえるときには、ビタミンB6の助けが必要です。ビタミンB6はまぐろやさばなどの魚介類、バナナ、にんにく、アボカドなどに多く含まれます。
●たんぱく質がとれる食材の選び方
たんぱく質というとまず、肉を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、肉に偏ると脂質のとり過ぎになるなどの弊害も出てきます。魚や卵、大豆製品など、いろいろなたんぱく質を組み合わせることでバランスもよくなります。
●たんぱく質食材を「常備」しておく
毎日、買い物に行けなくてもたんぱく質を確保できるよう、冷凍の肉や魚、さば缶などの保存がきく食材や、卵・納豆・豆腐などの定番食材を常備しておきましょう。
●魚のハードルを下げて手軽にたんぱく質を
魚からたんぱく質をとりたくても、調理が大変と思っている人も多いでしょう。そんなときは、まず刺身や切り身、缶詰など下処理なしで手軽に使えるものから始めてみましょう。
●とくに朝食でしっかり摂取
からだの組織の分解や合成は寝ている間にも行われるため、夜間はその材料が不足しやすくなります。そのため、とくに朝のたんぱく質の補給が重要です。
●1品プラスで手軽にたんぱく質補給
完璧な一汁三菜を目指さなくても大丈夫! 納豆や豆腐などの大豆製品や卵などを使った「たんぱく質がとれる小さな主菜」を1品プラスするだけで、たんぱく質の摂取量を増やせます。
子どもにたんぱく質をとってもらいたくても、なかなか思いどおりにいかないものです。完璧を目指さず、まずはできることから試してみませんか?

「魚を食べたがらない」
竜田揚げ・照り焼きなど食べ慣れた味付けで出すと食べやすいでしょう。缶詰をそのまま活用するのもおすすめです。
「朝ごはんを食べてくれない」
朝食を食べないと、1日に必要なたんぱく質をとりづらくなります。朝食欠食しないよう、食べられるもの、食べられる量から始めましょう。前日の夜ふかしや夜食も見直しのポイントです。
「肉ばかり食べる」
みそ汁や煮物に豆腐や油揚げなどの大豆製品を入れるなど、植物性のたんぱく質も使いましょう。魚は揚げ物にしたり、肉料理に近い味付けにすると食べやすいでしょう。
「おやつに菓子ばかり食べる」
おやつを「第4の食事(補食)」と考え、チーズやヨーグルト、ゆで卵などたんぱく質がとれるものに置き換えてみるのも1つの方法です。
どの悩みにも共通していえるのは、「完璧にやろうとしない」ことです。からだづくりの土台になるたんぱく質は、1つの食材が食べられなくても、ほかの食材で補う方法があります。焦らず少しずつ、家族でお子さんの食習慣を育てていきましょう。