取材監修/関西大学化学生命工学部教授 福永健治 先生
スーパーなどで食品のパッケージ裏にある『脂質:15g』という数字を見て、「太りそう……」と、そっと商品を棚に戻した経験はありませんか?けれど、その判断、少しもったいないかもしれません。
実は、脂質には私たちのからだにプラスに働く脂質と、とりすぎに注意したい脂質が混じっており、正しく知れば、からだの強い味方にもなる栄養成分なのです。関西大学化学生命工学部教授の福永健治先生は、「『脂質=太る、健康に悪い』というイメージがありますが、その数字の内訳こそが重要です。脂質は"量"だけでなく、"種類"を意識して選び、バランスよくとりましょう」と話します。
6月22日は「DHAの日」です。これを機に、DHAも含まれる脂質について正しく知ってみませんか? まずは、脂質について気になる疑問を聞いてみました。
脂質は、太りすぎや生活習慣病予防のために、避けたほうがよいと思われがちですが、エネルギー源になるほか、細胞膜や一部のビタミン・ホルモンなどの材料になり生命の維持にも欠かせない栄養素です。
脂質は、常温で液体の「油(oil)」と固体の「脂(fat)」に分けられます。液体の油は植物に多く含まれるほか、魚にも含まれています。一方、固体の脂はバターや肉の脂に多く含まれています。
この違いは、「不飽和脂肪酸」と「飽和脂肪酸」と呼ばれる成分の割合によって決まります。不飽和脂肪酸の割合が高いほど固まりにくい油になります。この2つの脂肪酸の固まりやすさの違いは体内での働きにも影響します。肉類に偏った食生活で飽和脂肪酸をとりすぎると、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを高め、動脈硬化を招く一因になるといわれています。

不飽和脂肪酸は、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。さらに、多価不飽和脂肪酸はω(オメガ)-6系(n−6系)脂肪酸とω-3系(n−3系)脂肪酸に分類されます。この多価不飽和脂肪酸は、からだのなかでつくることができないため、食品からとる必要がある「必須脂肪酸」です。
※一般的に普及している「ω-3系」などのωと、「n-3系」などのnは、脂肪酸の構造上の二重結合の位置を示すもので同じ意味です。

現代の食生活では植物の油など、ω-6系脂肪酸の代表格であるリノール酸をとりすぎてしまう人が多く、それによって健康に悪影響を与える場合があることがわかっています。
だからこそ、魚の油に多いω-3系脂肪酸を意識してとることが大切です。ω-3系脂肪酸には、動脈硬化の一因となる血液中の「中性脂肪」を減らす働きがあります。また、血管の健康維持をサポートし、スムーズな流れを保つのに役立ちます。
また、ω-3系脂肪酸のうちDHAは、脳に対する働きも注目されています。人間の脳において重要な構成成分であるDHAを習慣的にとることは、認知機能の維持への関与が期待され、認知症予防の可能性があるとされています。
DHA・EPAがとくに多く含まれるのが、さばやいわし、ぶり、さんまなどの青魚です。

海に囲まれている日本は、かつては魚をたくさん食べる食生活を送っていました。近年では食の欧米化が進み、肉類を食べる量が増える一方、魚類を食べる量は減少傾向にあります。
日ごろから肉類、魚類、野菜類などの栄養バランスに注意しながら、魚をあまり食べない人ほど意識して魚からDHA・EPAをとりたいものです。

冒頭にご紹介した通り、6月22日は、「DHAの日」です。この時期は、夏に向けて気温が上がり、体調を崩しやすい時期でもあります。この機会に魚に多く含まれるDHA・EPA(ω−3系脂肪酸)を普段より意識して摂取してみませんか。
DHA・EPA(ω−3系脂肪酸)は生の魚はもちろん、缶詰や魚肉ソーセージでも摂取できます。塩分に配慮しつつ、上手に取り入れましょう。
DHAの日の由来や、魚のDHAを簡単にとる方法は、以下の記事で詳しく説明しています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、体内ではつくることができない必須脂肪酸であるω(オメガ)-3系脂肪酸の一種で、おもに魚に多く含まれています。脂肪酸とは、あぶらを構成する主要な成分で、とくにω-3系脂肪酸にはさまざまな健康効果があることがわかってきました。
また、これまで魚に含まれる脂質に注目してきましたが、さらに最近の研究※では、魚を食べると、DHA・EPAはもちろんのこと、魚のたんぱく質にも、健康を支える優れた機能があることが注目されています。代表的なのは、血中のコレステロールを減らす働きです。手軽な方法も活用しながら、さまざまな健康効果をもつ魚の摂取量を増やして、習慣化していきましょう。
※月刊BIOINDUSTRY 2025年7月号【特集】魚肉たんぱくのすばらしさと魚食普及活動