取材監修/ありがとう料理研究家・パパ料理研究家 滝村雅晴 先生
毎年11月15日は、子どもの成長を祝う七五三の日です。七五三では、子どものすこやかな成長を願い、さまざまな食材が縁起を担いで食べられてきました。魚もその一つです。たとえば、鯛(たい)は、「めでたい」の語呂合わせから、お祝いの席には欠かせない縁起魚です。ぶりは、成長とともに名前が変わる「出世魚」で、子どものすこやかな成長を願うのにぴったりです。そして、えびは腰が曲がるまで長生きできるようにと、長寿の象徴として親しまれてきました。このように日本の食文化と魚は深く関わってきたのです。
最近では、魚が苦手という子どもが多いともいわれています。あなたのご家庭ではどうでしょうか。もし最近魚を家族で食べていないなと感じる人は、この機会に「魚を食べる」という食文化に目を向けてみませんか。子どもたちに魚の魅力を知ってもらうために、ママやパパができる食生活のヒントを、料理研究家で日本の食卓での魚食を推進する「パパさかな大使」代表でもある滝村雅晴先生に伺いました。
2013年、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食。そのなかでも重要な位置を占めるのが魚介です。魚介を多用し、その豊かなうま味を生かす日本独特の料理は、世界で注目されています。
しかし、その一方で、国内での魚介類の消費量は、この20年ほど減りつづけています。水産庁の発表する水産白書では、2006年度時点で、小中学生が給食で嫌いな料理の1位が「魚料理」という結果が出ていました。
子どもが魚料理に苦手意識をもつ理由としてあげられているのは、「骨があるから」「食べるのが面倒」「食べるのに時間がかかる」「においが嫌い」などです。また、食べる機会が減っているのは「調理時間がない」「下処理が大変」「後片付けが面倒」といった親の事情の影響も少なくありません。
こうした統計を見ると、子どもは魚嫌いだと思ってしまいそうですが、子どもはすべての魚や魚料理が嫌いなわけではありません。じつは魚料理を「好き」と答えた子どもは約45.9%で、「嫌い」の10.6%を大幅に上回ったという調査結果もあります。2024年に、当時のマルハニチロ(現Umios)が行った回転寿司に関する調査(回転寿司に関する消費者実態調査2024)では、子どもが好きな回転寿司のネタは、小学生では1位「サーモン」、2位「まぐろ(赤身)」となっています。子どもは魚が嫌い、魚の調理は面倒と決めつけずに、できるところから魚料理をとり入れることが大切です。

魚をはじめ魚介類を多くとり入れた食事は、食卓のバリエーションが広がるだけでなく、健康面でも子どもの成長にうれしい多くの効果があります。魚介類がもつ、栄養学的なメリットをご紹介します。
●良質なたんぱく質が豊富に含まれる
子どもの成長に欠かせない栄養素の筆頭にあげられるたんぱく質。魚介類は、魚離れが進むといわれるなかでも、日本人の動物性たんぱく質摂取量の約4割、全たんぱく質の約2割を占める重要な食材です。
たんぱく質の「質」、つまり体内での利用されやすさを示す「アミノ酸スコア」は、ほとんどの魚介類で100点満点なのに加え、さらに一緒にとる脂肪(DHA・EPA)など、ほかにもからだにうれしい栄養素が多いこともポイントです。
子どもとたんぱく質の関係については、以下の記事で詳しく説明しています。
●からだに大切な脂肪酸であるDHA・EPAがとれる
魚介類の脂肪には、DHAやEPAといった機能性成分が豊富に含まれています。これらは、体内で合成できないため、食事でとらなければならない必須脂肪酸の一種です。さらに、必須脂肪酸のなかでも現代の食生活においてバランス的に不足しやすいことが知られています。
とくにDHAについては、「子どもの脳の発育に重要な役割を果たすことがわかってきた」という報告もされています※。
※出典:Teisen MN, Vuholm S, Niclasen J, Aristizabal-Henao JJ, Stark KD, Geertsen SS, Damsgaard CT, Lauritzen L: Am J Clin Nutr, 112: 74-83, 2020
DHAについては、以下の記事で詳しく説明しています。
脂質の種類による体への影響の違いや、魚に多く含まれるDHA・EPAの働きについて解説しています。
●ビタミン・ミネラルが豊富に含まれる
魚介類は、ビタミンや、カルシウムなどのミネラルといった重要な栄養素の宝庫です。とくに、近年の日本人の食生活で不足しがちなビタミンDやカルシウムが、魚介類には豊富に含まれています。
よく知られるように、カルシウムは骨の材料になり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。どちらも成長期の子どもにはとくに重要です。

魚料理と聞くと、「まず魚をさばかないと」「下ごしらえが必要」といったイメージがあるかもしれませんが、気負って手間をかける必要はまったくありません。
調理時間ゼロで、温めるだけの魚の惣菜を買ってきても、出前でも外食でもOK。また、スーパーで売っている骨のない切り身、魚の水煮缶やツナ缶などを使えば、手間をかけずに短時間で料理することもできます。お刺身なんて、究極のファストフードですよね。すぐ食べられます。
こうした方法なら、魚が苦手な理由や、日ごろの料理をするときのわずらわしさも解決しやすくなるでしょう。どんな方法でもよいので、魚料理を、まずは気軽に食卓にとり入れる機会を増やしてみませんか。
いちばん大切なのは、家族みんなで魚をおいしく食べ、その時間が思い出として刻まれること。子どもが大きくなっても、その食卓を忘れずに魚介類をとる食習慣がつづいていけば、健康づくりにも役立つでしょう。さらに、次の世代にも日本の魚食文化が伝えられたら、とても素晴らしいことでしょう。
日本は島国です。日本の周りには、大きな海が広がっていて、身近にもたくさんの魚があるのですから、おいしい魚、いっぱい食べましょうね。
